ギョーザ無人販売店の数が3年で10倍に急増した。
帝国データバンクが67事業者を対象に集計した推移によると、店内備え付けの冷凍ケースから顧客が商品を取り出し、料金箱に現金を入れる無人販売スタイルの餃子専門店は、2020年度末に131店舗、2021年度末に827店舗となった。2022年度末には1282店舗と、3年で約10倍に拡大。2023年7月末時点では1400店舗に達している。
※店舗数は推定値を含む。
【関連記事】お取り寄せ『宅麺.com』プレミアムメンバーシップ開始、「ラーメン富士丸」など即完売の人気商品も毎月必ず購入可能に/グルメイノベーション
冷凍餃子の無人販売事業に進出した企業の進出時期(初出店時ベース)は、2021年度中が最多で、全体の6割がこの時期に参入した。無人店舗ビジネスで成功した企業が多く出たことから、2022年度以降に新規参入した企業も2割を占めた。
2022年度末時点で最もシェアが大きかったギョーザ無人販売店は「餃子の雪松」(運営:YES、東京・国分寺)。全国シェアのおよそ3割を占めた。
帝国データバンクによると、冷凍餃子の無人販売ビジネスは、手軽な調理で人気が高い「ギョーザ」を、巣ごもり下の買いだめ需要を受けた「冷凍食品」としたことで、消費者に受け入れられる余地が広がった。総務省の家計調査によると、冷凍餃子を含む2022年度の冷凍調理食品の支出額は、1世帯当たり1万円を超え、2015年度以降で最高。24時間営業による利便性の高さ、つり銭が不要な“30~40個で1000円”の価格設定なども、消費者の認知度を大きく高める要因となった。
他方、無人販売を展開する企業では、中華料理店や業務用冷凍食品メーカーがコロナ禍での販売減少を補うために冷凍餃子専門店へと進出したケースが多くみられた。
「事業再構築補助金」など各種補助金制度の活用も背景に、本業とは別の事業として手がける動きも広がったことで、駐車場運営やクリーニング店など他業種からの参入も多くみられた。
有人店舗に比べて省スペース・低コストでの開業が可能なこと、人件費などのランニングコストが大きく抑えられるとことなどのメリットも後押しした。特に、店舗運営に従業員を多く必要としない点は注目されており、冷凍肉やスイーツなど、餃子以外の商材でも無人販売ビジネスの新規展開が目立っている。
〈ギョーザ無人販売店の出店数は鈍化傾向、競争激化で閉店も〉
コロナ禍の3年間で1000店舗以上増加した無人餃子販売店は、足元では既存店舗の売り上げが減少傾向に転じたケースもあり、競争激化の影響が出始めている。これまで店舗数の急増を支えてきた出店ペースも、2023年度に入って鈍化傾向。店舗の閉鎖や事業の断念といった動きも見られ、市場は飽和状態に近づきつつある。調査対象となった67の餃子無人店で販売する餃子1個当たりの価格は約30円と、市販冷凍餃子に比べるとやや割高な点も、物価高で節約志向が強まる中では逆風となる可能性がある。
新型コロナウイルス感染症の「5類」移行で外食需要が回復し、相対的に巣ごもり需要が一服するなか、今後の市場維持のカギは利用者層の拡大にある。
日本冷凍食品協会(東京・中央)が2023年4月に行った調査では、自動販売機や無人店舗などで冷凍食品を購入した割合は、男女ともに1~2割。利用者層の拡大余地は依然として残っているなか、味や品質、価格に見合うこだわりといった、「無人販売」など話題性以外の誘客戦略が求められている。